今回は電動ガンの基本であり、奥が深い「シム調整」について書こうかと思います。初心者でもわかりやすい内容です。

電動ガンの静音化やレスポンスアップを突き詰めるとき、絶対に避けて通れないのがシム調整です。高額なモーターや電子トリガーを買い漁る前に、ここの物理的な噛み合いを考えないとうるさいままです。

「何度調整しても、銃口を塞いだときに『ギャッ』と甲高いギアノイズが残る…」

そう悩んでいるなら、それはシムの「厚み」ではなく、ギアが回転するときの「力の逃げ方向」や「ケースの歪み」、さらにはグリップやピニオンの角度を見誤っている可能性が高いです。

まずは3つのギアの名前を覚えよう

メカボックスの中には、モーターの力をピストンに伝えるために「3つの丸いギア」が噛み合って並んでいます。まずはそれぞれの名前と役割を整理しておきましょう。

GEAR 01
ベベルギア

傘の形をしたギア。グリップ内のモーターの回転を最初に受け止める。底面が斜めになっているのが特徴。

GEAR 02
スパーギア

真ん中にある平らなギア。ベベルとセクターの間に位置し、回転速度やトルクを仲介する。

GEAR 03
セクターギア

半分だけ歯がついた特殊なギア。ピストンに直接引っかかってバネを後ろに引き下げる。

MOTOR
ピニオンギア

モーターの先端についた小さなギア。ベベルギアに最初に噛み合う、シム調整の起点となるパーツ。

メカボックス内のスパーギア・セクターギア・ベベルギアの配置
シム調整とは、「ピニオン ⇄ ベベル ⇄ スパー ⇄ セクター」の噛み合いの隙間(クリアランス)を、0.1mm単位の薄い金属ワッシャー(シム)を使って調整する作業のことです。
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なぜギアノイズが出るのか?という第一原理

そもそも、なぜギアから「シュィィン」とか「ギャッ」という不快な高音が出るのか。原因は大きく分けて2つしかありません。

原因 01
バックラッシュの不適切

歯面同士の隙間が不適切で、歯が激しく衝突している(またはキツすぎて擦れている)状態。

原因 02
スラスト力による押し付け

ギアが回転したときの「軸方向への推力」で、ギアがケースや隣のギアに押し付けられている状態。

よくある「スパーギアの裏面に0.3mmを敷いて…」というテンプレ通りの組み方だと、この2つのどちらかが確実に破綻します。海外製メカボックスはもちろん、マルイ純正であってもケースの製造公差(個体差)でコンマ数ミリのズレが存在するからです。
シム調整とは「ノギスで隙間を測る作業」ではなく
「ギアが回ったときに力がどこに逃げるか」を三次元でコントロールする作業

初心者でも迷わない「逆算型(ベベル基準)」の組み方手順

ネットでは「スパーギア基準」が主流ですが、静音化を最優先するなら現代のカスタムは「ベベルギア基準」の一択です。最も強烈な負荷がかかる「ピニオンとベベルの噛み合い」から順番に決めていくのが、一番失敗しない方法です。

STEP 1
ピニオンとベベルの「理想の位置」を出す

メカボを開けて中身をすべて取り出し、ベベルギアだけを戻してグリップとモーターを取り付ける。グリップ底のネジを回し、ピニオンがベベルの斜めの歯に「一番綺麗に、深くしっかり噛み合う高さ」を探す。この位置をシムで固定することが全体の基準になる。

STEP 2
スラスト力を計算して「逃げ」を作る

モーターがベベルを回すとき、ベベルギアは「モーターから遠ざかる方向(左ケース側)」に強烈に押し付けられる(スラスト力)。手で触って「ガタがない」からとシムを詰めすぎると、通電後に凄まじい摩擦音を生む。押し付けられる側のシムは気持ち薄め(0.05mm程度のわずかなガタ)に仕上げるのがコツ。

STEP 3
スパー→セクターへと繋ぐ

ベベルの位置が決まったら、そこに重ならないようにスパーギアの高さを合わせ、最後にスパーと噛み合うようにセクターギアの高さを合わせる。指で弾いたときに抵抗なく「シャーーー」と軽く回り続ける状態になれば基本完成。

静音化を破綻させる「3つの物理的罠」

【超重要】グリップの「角度」が生む致命的な異音

カスタムロアフレームや社外グリップに変えたときに多く発生する罠。グリップの傾斜角度がコンマ数度でもズレると、ピニオンがベベルに対して「斜め」に噛み合い、どれだけシム調整を頑張っても「ギチギチ」「ギャー」という金属音が消えなくなる。最悪の場合はギアの歯が粉砕します。グリップを変える際は「モーターの進入角度が狂わないか」のチェックが必須です。

異なるメーカーのギアを混ぜる(ミックス)デメリット

「スパーはマルイ製、セクターは海外の強化ギア」というように別メーカーを混ぜるのはおすすめしません。ギアの歯の形(モジュールやインボリュート曲線)はメーカーごとに微細に異なります。異なるメーカーを組み合わせると歯と歯の当たりが点接触になり強烈なノイズを発生させ、さらに硬度の違う金属が擦れ合うことで柔らかい方があっという間に摩耗します。ギアは同じメーカーの「3点セット」で統一が鉄則です。

モーターだけを変更するデメリット

「モーターだけ変更」というカスタムにも落とし穴があります。モーターのピニオンギアはメーカーによって異なるため、ピニオンとベベルギアの噛み合いの相性が合わないことがあります。これではシム調整をどんなに頑張っても意味がありません。

ヘリカルギアを採用する場合の特殊シムパターン

さらなる静音化を目指して「ヘリカルギア(歯が斜めに切られたギア)」を組む場合は、通常の平歯車とは全く異なるシム調整パターンが必要になります。

平歯車は回転時に軸方向への力(スラスト力)がほとんど発生しません。一方ヘリカルギアは回転すると全ギアが特定の方向へ強烈にスライドしようとします。
  • 回転方向とスラスト方向の把握:セクターがピストンを引く瞬間(最大負荷時)に、スパーとセクターが互いに「引き付け合う」か「離れ合う」かの一方向へ限界まで押し付けられます。
  • シムパターンの最適化:負荷がかかったときにギアが移動する側のシムをあらかじめ「逃げ(0.05〜0.1mmの余裕)」として薄めにしておき、反対側のシムで位置をキッチリ固定します。ここを間違えるとヘリカル特有の静音性が完全に潰れ、ものすごい駆動抵抗になります。

盲点:メカボックスを「閉めてネジを締めた時」の歪み

シム調整を難しくしている最後の原因が、「メカボックスを閉めてネジを締め込むと、ケース自体がミクロ単位で歪む」という物理的現象です。ケースを開けた状態でどれだけ完璧にシムを合わせても、すべてのネジを締め付けると内壁の間隔がコンマ数ミリ狭まったりします。特に海外製亜鉛合金ケースや肉抜き軽量メカボックスはこの歪みが顕著です。

  • 必ず「全ネジ締め」の状態で確認:毎回すべてのケースネジを本締めした状態で、ノズルや隙間からピンセットでギアを突いてガタ(軸方向の遊び)を確認してください。
  • 歪みを見越した「±0.05mm」のバッファ:ネジを締め込んで手で回したとき「ほんの少しタイト(重い)かな?」と感じたら、迷わず0.05mmシムを抜いてください。負荷時のケース歪みをシムの微小な「遊び」で吸収させます。

まとめ

電動ガンのシム調整は、ただの「隙間埋め」ではなく、「動的な力の分散とケースの歪み、パーツの角度まで計算するコントロール」です。

1
軸受けをケースに水平に完全固定する

すべての調整の前提。軸受けが傾いていれば、シムをどう調整しても解決しない。

2
ベベルとピニオンの噛み合いから逆算して組む

一番のノイズ源から基準を決める。スパー基準ではなくベベル基準が現代の正解。

3
グリップ角度・ギアメーカー統一など外的要因を排除する

シム以外の狂い要素をあらかじめ取り除くことで、調整の精度が格段に上がる。

4
全ネジ本締め時の「歪み」を考慮してバッファを持つ

ケースを閉じた状態での確認を必ず行い、コンマ数ミリの余裕を残して仕上げる。

ネジを何度も開け閉めする非常に地道な作業ですが、バチッと決まって「ストン…」とピストンの打突音しか聞こえなくなった瞬間の快感は、何物にも代えがたいんですよね。

皆さんも次の週末、全体の質量バランスや角度に目を向けながら、じっくりシム調整にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。ではでは〜!

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